中判カメラ。
その大きなフォーマットで撮影された写真、特にポジフィルムをライトボックスで鑑賞することは格別です。
長くデジタルに移行していた私が再びフィルムに戻ってきたきっかけは6x6判のローライコードⅢで撮影したポジフィルムの美しさにすっかり心を奪われたからでした。
以来、中判カメラは6x6判が主体となりました。
二眼レフはレンズ交換はできないから安心、と思っていたのですがそんなはずもなく。カメラごと増殖することになるのですが、ずっと気になっていたのが6x6より大きな6x9フォーマット。
6x6より横に1.5倍広くなった画面はさぞ素晴らしいのだろうな。
いつかは6x9判のカメラで撮影してみたい。
そう思っていました。
そんななか、遭遇したのがこのカメラでした。
Super Ikonta Ⅰ (530/2)
6x9判のスーパイコンタの初代モデル。
1934年か35年あたりのカメラ。
所謂スプリングカメラといわれるタイプのカメラです。
このタイプのカメラの最大の特徴は折りたためること。
凄くコンパクトになります。
とはいえ、6x9カメラなのでそこそこの大きさはあるのですが、薄いので鞄への収まりも良いです。
そして軽い。
山岳写真によく使われていたというのも納得です。
撮影するときは前カバーを開いてレンズ部分を引き出すのですが、スムーズに展開されて驚きます。
長い蛇腹でつながれたレンズがニョキっと出てくるのが楽しい。
Tessar 10.5cm F4.5付。
戦前のノンコートレンズ。
レンズ周りが白と黒のツートン。おしゃれな感じ。
ZEISS と IKONの間の赤指標もかわいらしい。
後のものは黒字に銀文字でシックな感じになります。
銀色の部分はニッケルメッキ。ほのかに黄色みがかかってなんとも良い。
格好良い・・・。
ドレーカイル式距離計。スーパーイコンタの肝ですね。
画面真ん中の中心部が黒いダイヤルを合わせてピント合わせ。
回すと、ダイヤルよりさらに上の円形の距離計窓から見える景色がちゃんと左右にずれるのですよね。
内部でプリズムを回しているらしいのですが、不思議。
画面右下に見えている棒のようなものはシャッターボタンです。
意外に押しやすいです。
構図用ファインダ。
こんなところにもロゴが。
これを起こして覗いて構図を決めます。
レンズを引き出すボタンを押すとばねではね上がります。
画像を取り忘れましたが、他の画像にもあるカメラの上部に立ち上がっている部分です。
蛇腹とレンズを引き出す時のタスキといわれるガイド部分。
ガイドのキラッと光るメッキとこの曲線が美しい。
蛇腹もこのタイプのカメラの特徴ですね。
古くて劣化し、穴が開いてしまっていることも多い部分。
幸いこの個体は大丈夫でした。
蓋裏にツァイスのマーク。
後期型はグリップ部分に移動してここにはない模様。
今回購入した個体には専用レリーズが付属していました。
前カバー部分に格納されているのですよね。
面白い。
押す部分が赤くてなんともかわいらしいです。
ちゃんと「Zeiss Ikon」と文字が入っている!
革ケースも付属。
少し傷んでいましたが、オイルを塗りこんでやるといい感じにりました。
金具部分の重厚感も素晴らしい。
たまらん。こういう付属品が付いているカメラに弱いのですよね・・・。
正直に言います。私、Ⅰ型とⅤ型で迷っていていましたがこの付属品にやられました。
背面。
ここにもZeiss Ikonのロゴ。
このカメラのフィルム送りは赤窓式。ここにフィルムの巻紙に印刷されいるコマ番号を出すことでフィルムの位置決めをします。
原始的ですがコマかぶり等に悩まされることは無いです。
2個あるのは専用マスクを使って6x4.5で撮影するときの為。
私の個体にはパリのカメラ屋さんの店名が入ったプレートが取り付けられていました。
ここかな。
戦前にドイツで生まれ、パリで売られたカメラ。
戦争を乗り越え、いつ日本にやってきたのでしょう。
なんともロマンを感じます。
良いなぁ・・・。
試写。
多摩川へ。
次の休みに早速試写に出かけました。
その日は晴れ。
恐ろしく暑い日でした。
夏らしい風景を撮りたい!ということで近くの水場、多摩川へと向かいました。
フィルムは気合のKodak E100。
温存しすぎて期限が来てしまっているのでいたのは内緒。
D850 とマクロレンズでデジタル化しています。
色がやっぱりおかしいですが、色調整が苦手なので取り込みそのままです。
雰囲気のかけらでも伝わればよいのですが・・・。
1stショット。1/100 F16。ちゃんと写っている。
河原のグラウンドで草野球をする人々。これも1/100 F16。
1/250はなるべく使いたくないので晴天の日はほぼ1/100固定となります。
想像上にしっかり写っています。
橋の上から。
良いな!
橋の下。
1枚目・2枚目の釣り人が居る部分に行ったのが3枚目となります。
橋の上から眺める事は多かったですが、初めて行ってみました。
水面すれすれの光景は青の世界、といった感じ。
ここだけはもう少し広角だったらな・・・と感じました。
やはり大きいサイズのポジは堪りません。
ルーペが無くても十分楽しめる感じ。
水面の描写がなんとも良いですのです。
テトラポットの質感もばっちり。暗かったのでF5,6で撮影。
イコンタユーザーの先輩曰くF5.6がスイートスポットとの事でしたがなるほど・・・。
いいねぇ・・・。
6x9判の横長な画面は35㎜と一緒の縦横比。
見慣れたフォーマットといえますが、こういう場面では広がりを感じて良いなぁ。
今回は逆光で撮影はしていませんが、ノンコートなことを忘れるくらい美しいです。
6x9ポジ、やはりいいです。
これははまるなぁ。
スプリングカメラ。
撮影していて今まで使ってきた中判カメラの一眼レフや二眼レフとはまた撮影ペースが違って面白いです。
撮影するまでの準備や手順自体はこちらの方が手間がかかるのですが、もう少し身軽な感じ。
カメラ自体が軽いためか。それともアイレベルでの撮影となる為でしょうか。
面白いですね。
手振れについて。
今回の試写で気付いたのは、結構手振れが出やすいこと。
ポジを直接見る分にはわからないけどデジカメで撮影すると僅かに手振れしてしまっているコマがいくつか見受けられました。
本体が大きさの割に軽く、シャッターボタンもレンズ周辺にあるのでうまく押さないとカメラの先端を振ることになるのでしょうか。
6x9の105㎜は135判でいうと50㎜に近い感覚ですが1/100は安全圏では無い感じ。
よく考えてみればフィルムの解像度は135だろうと120だろうと一緒。
105㎜が画面を単純に広げただけで手振れしなくなるなんてことは無いようです。
35㎜でいう105㎜と同じ感覚で扱ったほうが良いのでしょうね。
できれば1/250を使いたいですが古いレンズシャッター機の最高速は使いたくないのです。
この辺り1/400や1/500が付いているモデルは良いなぁ。(1/200辺りが余裕をもって使える)
まあ、構え方・シャッターの押し方で改善できるレベルだと思うので次回は考えて取ってみようと思います。
修業が足りない、ということですね。
コマ送りトラブル?
撮影中、いくらフィルム送りノブを回しても空転してしまって送られなくなってしまいました。
装填しているフィルムはE100、しかもまだ数枚しか撮影していません。
もう試合終了!?すごく焦りました。
さいわい、イコンタユーザーの先輩に質問できる環境であった為、聞いてみると良くあることな模様。
このカメラはフィルム送りをゆっくり行わないと、フィルムが軸から外れて空転してしまうようです。
アドバイスを頂いて確認すると、巻き上げノブの反対側のフィルムを押さえている円盤が浮いており、それを押し込むことでなんとか復旧出来ました。
ここです。
これが浮かびあがっていました。
スプールがノブから外れた分、こちら側浮いてしまうようです。
運が悪いとここから感光する可能性もあるのだとか・・・。
ここを押さえながらノブを回せば浮きは抑え込めそうですが、他に無理がかかる可能性もあります。
今後検証してみます。
イコンタへの道。
さて、当初このカメラを買うことになった経過をテンションに任せて書いていたのですが、冷静になってみると無駄に長い。
消そうかとも思いましたが、勿体ないので下の方でヒッソリと。
だらだら書いているので、お暇な時にでも。
6x9カメラ。
当初6x9判で気になって居たのは富士フィルムのGW690系か昔のツアイスのスプリングカメラスーパーイコンタでした。
GW690は比較的新しく、評判も良いようです。レンズも間違いないのでポジでもさぞかし綺麗なことでしょう。ただしかなり大きいカメラです。6x9判は8枚撮りなので、サブとして別のカメラを持つことが多くなると思いますが、大きなカバンが必要になりそうです。
スーパーイコンタはスプリングカメラなので折りたためます。今使っている鞄にも収まりそうです。何より格好良い。
だだ、いかんせん古いカメラです。もっとも新しいもので1957年のもの。古いテッサーでどこまで写るのだろうかという不安も。
しかし、このところ古いテッサーを搭載したローライフレックススタンダードを使っていて、テッサーでも侮れない事が分かってきました。
また最近、イコンタで撮影した素敵な写真を見せていただく機会もあり、十分戦えるのでは?との結論に至りました。
そういうわけで、スーパーイコンタを探すことになりました。
Ⅰ型 ? Ⅴ型?
6x9のイコンタは戦前から戦後まで製造され結構なモデルが有ります。
私の中で購入候補は最初の1型か、最後のⅤ型。
それぞれの私的チェックポイントは以下の通り。
Ⅰ型
開放F値が3.8若しくは4.5のノンコートのテッサー搭載。
シャッター速度が1/250若しくは1/400。
ファインダーにフレーム枠枠無し。
レリーズボタンはレンズ側。
Ⅴ型
開放F値3.5のコーティング付きテッサー。
シャッター速度は1/500まで可能。
ファインダーにフレーム枠付き。
レリーズボタンはボディ側。
・レンズ
開放F値3.5、3.8、4.5の三種類。
当然明るいほうが、有利ですね。ただ、明るいものでもF3.5。
暗いところで厳しいには違いないでしょう。
私のは主に風景を取るので大抵の場合絞りますし、大きな問題ではないです。
問題はコーティング。ローライフレックススタンダードやライカのElmar3.5cmを使っていてノンコートでも十分写るころはわかっています。
有り難いことに、Ⅰ型の作例も見せていただく機会をありましたが、同じ印象でした。
ただ、逆光や、新緑等の微妙な色・発色が命な被写体相手だと流石にノンコートだと厳しいかなという気もするので、ポジを主体に考えるとコーティング付きの方が良いように思えます。
・シャッター速度
これは1/400、1/500があったほうが使いやすいでしょうか。
古いレンズシャッター機の最高速度はかなり無理をしているのであまり使わない方が良いとの話を聞くので、あまり怖くて使えません。実質は一段下になります。よって最高速が1/250のモデルだと1/100、1/400(1/500)だと1/200(1/250?)が安心して切れる上限となります。
どちらにせよ、晴天下ではISO400は厳しいスペックですが、ISO100でも1/100ではF16以上に絞ることになる為、できればもう少し余裕が欲しいかなと思う次第。
・ファインダー
基本はファインダー内のフレームがあるか無いか。
有ったほうが視界にブライトフレームが浮かぶので良さそうですが、これが大抵劣化して曇っているのです。Ⅰ型シンプルな構造でクモリとも無縁。
まあ、イコンタのファインダーは純粋に構図決定用なのでちゃんと撮影範囲が分かれば良いという考えも有りますね。(ピント合わせは専用のファインダーが別にあります)
理想はブライトフレームが綺麗なものですが・・・はたして存在するのでしょうか。
以前曇っているモノを覗かせてもらたときは構図確認はできますが、ちょっとテンションは下がるよな・・・そんな感じでした。
・レリーズボタンの位置
ローライ等で慣れているのでレンズ周りにシャッターがある機種にも慣れているのでどちらでもよいかな?
ボディ側にある機種でも左側にあるようですし、どちらにせよカメラの構え方に工夫がいりそうです。
初撮影時の手振れにも影響しているのかなぁ。
結局どちらが欲しい?
上記ポイントで考えた結果どちらかといえばⅤ型が優勢。
ポジでの撮影を重視した場合は発色とシャッター速度に余裕が有るのが大きいと感じました。
しかし、問題はファインダー。
果たしてちゃんとしている個体は存在するのでしょうか。
そういう意味では、シンプルな構造かつファインダートラブルの心配のない、Ⅰ型も良いなとも。
かなり悩ましいですが、とりあえずはファインダーが綺麗なⅤ型を探すことにしました。
ところが。
遭遇。
そんななか、立ち寄ったカメラ屋さんにその子はいました。
Ⅰ型のF4.5付。
正直シャッター速度は1/250までモデルだったので厳しいかなとも思いました。
しかし、見せて貰うとかなり綺麗で付属品も完備。
前述したとおり、レリーズとケースが付いているのにやらてしまったのでした。
前述の通りⅠ型も悪くないのはわかっていたので。
カメラは出会いですね。
こうやって、どんどん増えてしまうのでした(笑)
とまあ、長々と書いてしまいました。
最後まで付き合ってくださりありがとうございます。